私事

精神障害の労災申請リーフレット ( ガイドライン ) から労災認定の可能性を上げる心得

精神障害の労災申請リーフレットをもとに証拠を集める

全体像を掴むことが、労災認定への道につながります。そのため、精神障害の労災申請リーフレットをもとに、職場で体験した出来事をざっくり把握しましょう。

リーフレットとは小冊子のようなもので、ここには精神障害の労災認定基準や事例が記載されています。

この基準を満たす出来事を中心に、証拠を集めていきます。

この記事の要約

・精神障害の労災認定リーフレットをもとに、自分に起こった出来事をまとめる。
・業務上の出来事が、判断基準に該当するか確認する。
・複数の「中」判定の出来事を中心に証拠を集めて「強」判定を狙う。

これまでのおさらい

精神障害の労災申請
労働者が職場での精神的ストレスやトラウマが原因で精神障害を発症した場合に、治療費や休業補償などの労災保険給付を受けるために行うもの。

精神障害の労災認定の要件
1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること。
2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと。

前回の記事でお伝えしたとおり、仕事以外のストレスや個体側要因があった場合、労災認定の可能性は著しく低くなります。

仕事以外のストレス
・ 申請者本人の個体側要因がある場合。
(うつ病を患った過去がある、アルコール依存症だった、など)
・ 業務以外の心理的負荷がある場合。
(身内の不幸、金銭トラブル、事故や災害の体験、など)

精神障害の労災認定では、業務上の強いストレスが原因で、労働者が精神障害を発病したと認められる必要があります。

仕事以外のストレス要因があると、精神障害発症の判断が複雑になり、「疑わしきは罰せず」と判断されて労災と認められないケースが多いと聞きます。

労災認定を勝ち取るために、業務上で強いストレスを受けていたのか証明しましょう

精神障害の労災認定は個々のケースによって異なり、多くの要素が総合的に評価されます。精神障害の労災認定リーフレットを確認しながら、精神的負担となった出来事を振り返っていきましょう。

前回の記事で詳細を紹介していますので、手元にリーフレットがない場合はダウンロードして準備を進めてください。

合わせて読みたい基礎知識

精神障害の労災認定リーフレットは厚生労働省のホームページでダウンロードできるほか、労働基準監督署にて紙媒体リーフレットが入手可能です。

手早くリーフレットをダウンロードしたい方は下記リンクからどうぞ。

参照:精神障害の労災認定[965KB]PDF ← こちらをクリックすると厚生労働省が作成したリーフレットPDF画面に飛びます。

厚生労働省

まずはリーフレットに目を通して、身の回りに起こった出来事が労災認定につながるのか把握しましょう。

リーフレットを読み解き、労災認定の可能性を上げる心得

精神障害の労災申請リーフレットの読み解き方

精神障害の労災認定基準は、厚生労働省が定めるガイドラインに基づいています。精神障害が労働条件や労働環境に起因するものかを判断するためのものになります。

精神障害が労災と認定されるための判定基準

以下、精神障害が労災と認定されるための主な基準を、かんたんに説明します。

  1. 職場での精神的負荷が高い状況
    長時間労働や過度の業務負担、極端な締め切りで圧力をかけられる、達成困難なノルマを課されるなど、職場での精神的負荷(プレッシャー)が高い状況が続いていたこと。
  2. ハラスメントや人間関係の問題
    職場でのパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、いじめや人間関係のトラブルなど、職場内での人間関係の問題が精神障害の原因となり発症した場合。
  3. 労働条件の急激な変化
    職務内容の変更、配置転換、昇進や降格など、労働条件の急激な変化が精神的ストレスを引き起こし、それが精神障害につながった場合。

ここはとても辛い作業になりますが、職場での過度のストレスや精神的負荷が具体的にどのようなものだったのか思い出してください。

リーフレットを見ながら、精神障害発症のきっかけだったと判断できそうな出来事をリストアップしてください。紙媒体リーフレットにマーカーで線を引いたり、文字を書いたりすると、まとめやすいですよ。

3つの判定基準「弱」「中」「強」       

業務による心理的負荷の強度の判断は、リーフレットに例が記載されています。

業務中の出来事による心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」の三段階で区分しています

簡潔にまとめると、仕事で精神疾患になるほどの強いストレスを感じる出来事が認められた場合は「強」判定となり労災認定

例えば、生死にかかわる極度の苦痛を伴う体験をした、業務に関連して他人の生死にかかわる重大な怪我を負わせた、など、強い心理的負荷のかかる出来事があった場合は「強」判定となります。

心理的負荷「強」判定の例 極度の長時間労働

リーフレット5ページにある、「特別な出来事の類型」極度の長時間労働の例をご覧ください。

リーフレット5ページにある特別な出来事の類型

参照:精神障害の労災認定リーフレット 5ページ(別表1)業務による心理的負荷評価表

厚生労働省

この例をみると、月に160時間程度の残業をしたことが証明できれば労災認定となります。

労働基準法により、1日の法定労働時間は8時間まで。1週間の法定労働時間は40時間までと定められています。(変形時間労働制やフレックスタイム制度の採用など、例外あり。)

これらの基準に基づいた勤務体系であれば、1ヶ月の法定労働時間は以下が目安です。

週の法定労働時間28日29日30日31日
一般事業場(40時間)160.0時間165.7時間171.4時間177.1時間
月の暦日数

月の労働時間はおよそ160時間 〜 177時間

上記の時間とは別に160時間の時間外労働を行ったことを証明する必要があります。一日当たり7時間近く残業することになります。

タイムカードで証明できれば一目瞭然ですが、長時間労働が続いているようなら人事課から指摘が入るのではないでしょうか。
(私の部署では、退勤時刻になると一旦タイムカードを押してから残業することが当たり前でした。上司は見て見ぬふりをしていました。)

社畜・・・

もしも、タイムカードで労働時間を証明できるのであれば、堂々と労災申請しましょう。労災認定になる可能性は高いと予想できます。

注意:リーフレット記載の「強」判定の例について。この例以外の出来事でも「強」になる可能性はあります。監督官や医師の判断により「基準の重み」が異なる場合があるため、参考程度に留めてください。

弁護士や社労士の話を聞く限り、一つの出来事で精神障害の労災認定となるケースは稀のようです。

そのため、複数の「中」判定をかけ合わせて、「強」判定になると主張する方法が、再現性があり可能性の高い選択だと考えます

私を含め、みなさんのほとんどは、「弱」「中」判定の出来事が複数ある状況ではないでしょうか。

体験した出来事をリーフレットと見合わせる

体験した出来事をリーフレットと見合わせる

リーフレットをよく読み込んで、自分の体験と近い事例をチェックしていきましょう。

出来事が複数個ある場合

リーフレット3ページに記載されている出来事が複数ある場合の評価

参照:精神障害の労災認定リーフレット 3ページ (3 )出来事が複数ある場合の評価

厚生労働省

業務上に起こった出来事が、複数ある場合の評価について補足説明をします。

複数の出来事の中で、一つでも「強い」心理的負荷を与える出来事があれば、全体の負荷を「強」と判断されます。(労災認定になります)

単独では「強」と評価できない場合には、それらの出来事について、ある出来事がきっかけで別の出来事が起こったのか、それとも、関係性のない出来事が次々と起こったのかを判断した上で、心理的負荷の全体を総合的に判断されます。

ここは複雑で、判断には労働基準監督官も頭を悩ませると言っていました。判断は労働基準監督官や医師の意見により左右されたり、提出する証拠によって判断が変わったりします。

そのため、私たちにできることは、実際に起こった出来事のリストアップ。事実に基づく証拠を提出することに集中しましょう。

ここで注目すべき点を挙げます。

  • 一つでも「強」の出来事があれば労災認定となる。
  • 複数の「中」の出来事がある場合、総合評価は「強」または「中」判定となる。
    「強」判定以外の場合は、労災認定になりません。
  • 一つの「中」と、複数の「弱」の出来事がある場合、原則として総合評価は「中」判定となる。
  • 複数の「弱」の出来事がある場合、原則として評価は「弱」判定となる。

出来事が時間的に近接している場合、全体の評価は個々の出来事よりも強くなる可能性があります。

一方、出来事が完結してから時間が経ってから次の出来事が起きる場合、全体の評価は個々の出来事の評価と同じになることが多いです。

心理的負荷の評価期間は発症前の6ヶ月間

私のケースを例にします。

はじめて病院へ行った日に、うつ病と診断されました。しかし、体調の良くない状態は以前から続いていました。
9月、業務上のストレスや疲労により体調を崩して一週間仕事を休みました。
その日以降も体調が良くない状態で仕事を続けていましたが、食欲不振や睡眠障害といった症状がひどくなり、体重が10キロ落ちました。
明らかに異常だと感じたため、翌年3月、病院を受診することに。
初診でうつ病と診断されて、休職するようにと診断書が出されました。

はじめて病院へ行ったのは体調不良になった半年後、翌年の3月です。しかし、体調を崩したのは9月から。そのため、9月〜12月が発症時期ではないかと考えていました。

しかし、労働基準監督署は「9月に発症」と判断したと思います。
(労災の聴取時、10月以降の出来事をほとんど質問されなかったため、9月発症の線で労働基準監督官は調査を進めていると推測。)

つまり、私のケースでは、3月〜9月に業務上の強い心理的負荷を感じる出来事を重点的に調査され、私はその間の出来事や事実を証明する必要がありました

私のケースでは、発症後(9月以降)に起こった出来事は、ほとんど調査対象にはなりませんでした。
例えば、10月に心理的負荷を感じる出来事が発生した事実があっても、発症後の出来事のためスルーされました。
(ハラスメントについては継続性を考慮するため、ハラスメントに限り、発症後の出来事の調査はあった)

発症前の6ヶ月間、ここを重点的に労働基準監督署は調査を行います。

パワーハラスメントの定義

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素を全て満たす言動とされます

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 就業環境が害されるもの

優位的な関係というのは、上司から部下のケースが一般的ですが、部下から上司の逆パータンも含まれます。

例えば、PCの操作に詳しい部下が、PCを全く使えない上司に対して、人前で馬鹿にしたり、無能と馬鹿にしたり。知識がある者が、知識のない者に対しての執拗な攻撃もパワーハラスメントと判断されます。

ほかにも、2023年9月精神障害の労災認定基準改正により、新たなハラスメント項目が追加されました。

  • 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた。
  • 感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した

顧客やクライアントからのひどいクレーム、いわゆるカスタマーハラスメントを受けた場合や、新型ウイルスなどで感染症の危険と隣り合わせで業務をしていた医療従事者も心理的負荷としてみなされます。

医療従事者や接客対応の人も精神障害で労災申請できる要素が増えたことになります。

これまで挙げた以外にも、まだまだあります。

ハラスメントにはたくさんの種類があります。
会議に呼ばない、一人だけノルマが高すぎる、業務を与えられず掃除ばかりさせられる、など。

嫌がらせだと感じたり、危害を加えられる出来事があったりした際は、何かしらの証拠を残すよう心がけてください。日記でもメモでも愚痴メールでも、なんでも構いません。

説明すると長くなるため、証拠の集め方は次の記事にて解説します。

記事のまとめ

記事のまとめ

今回の記事をまとめます。

リーフレット ( ガイドライン ) から労災認定の可能性を上げる心得
・精神障害の労災認定リーフレットをもとに、起こった出来事を当てはめる。
・業務上の出来事が「弱」「中」「強」どの基準に該当するか確認する。
・複数の「中」判定の出来事を証明して「強」判定を狙う。

リーフレットを読みこんで、労災認定になる証拠を可視化しましょう。

次の記事では、リーフレットをもとに、重要かつ有効な証拠の集め方について解説します。

この記事シリーズでは、労災申請のプロセスを分かりやすく解説します。
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精神疾患発症の原因が業務であることを一緒に証明していきましょう

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